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音葉の首に、日本刀が添え当てられていた。
首からは一筋の血が流れ落ちていた。
ジェイドが、もう少し力を入れれば、その首と胴は切り離されるだろう。
「空砲を読んで、一気に懐まで飛び込んできたって訳か‥」
音葉は、絶対絶命の状態においても、その目からは光が消えてはいない。
「面白い‥」
懐を取り、絶対有利の状況だったジェイドの額に、銃口が充てがわれている。
「あの状態からなら、お前を止める事は不可能だからな。ならば、お前がどう動くかを考えたら、おそらくは、空砲を読み切って、懐に飛び込んでくるだろうと‥」
音葉は、ジェイドに言った。
今、首筋に日本刀を添え当てられた状況の男と、額に拳銃を充てがわれている男が、次の一手を打てずに、膠着している。
「首と胴を切り離されてもいいんですね‥」
ジェイドは、音葉を見ながら言う。
「やってみたらどうだ?お互いに勝ちはないぞ。良くて痛み分けだ。お前が動いたら、迷わずに撃つ。それがどんな状態でも!」
音葉の目には、力強く、絶対な意思が見えている。
「なるほど‥大和魂ですか‥自分の命を捨ててでも、私を道連れにする気ですね‥」
ジェイドは、今の状況を喜ぶかの様に言った。
「覚悟は出来ているよ。」
音葉が言う。その表情に迷いはない。
「あなたは、この状況は想定していた‥そして、空砲を撃つ意味があった。救援に場所を知らせるという意味で‥」
ジェイドは、微笑を消すことなく、音葉に言う。
その時、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
「どうするかな?」
音葉は、ジェイドを見ながら言った。
「まさか、こんなに楽しませてくれる相手が、こんか平和ボケした日本にいるとは‥ここで殺してしまうには惜しい‥」
そう言うと、ジェイドは、音葉の首筋から、ゆっくりと日本刀を離した。
「‥‥?」
思ってもいなかったジェイドの行動に、音葉も、一瞬だけ戸惑いの表情を浮かべる。
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