1人が本棚に入れています
本棚に追加
カラオケの話
カラオケの苦い思い出なら沢山ある。
友達が歌う時、私は手拍子したり、リズムに乗っている。
でも私が歌っている時、友達はずっと次の曲を選んでいる。
→大した友情じゃなかったのかもしれない。
宇多田ヒカルの歌がうまく歌えない。
→そもそも難しい。
声が出ないと思ったら「1オクターブずれているよ」と指摘される。
→ありがとう。
友達が知人の結婚式用に一青窈さんの「ハナミズキ」を練習していたので、「ちょっとリズムが違うかも」と指摘したらキレられた。
→結婚式で恥をかかないように指摘したのに・・・。
主に歌よりも人間関係でのトラウマが多い。
カラオケって難しい。
それより難しいのが人付き合いだ。
段々と一人で楽しめる『ひとりカラオケ』に行くことが増えた。
一人だから、サビだけ歌ってもいい。
ラップは飛ばしてもいい。
1オクターブ外れてもいい。
よく知らない最新曲を最初だけ歌ってすぐキャンセルしてもいい。
自由!
ただ「自由」とは「孤独」でもある。
『ひとりカラオケ』は楽しいけど、少しだけ寂しい。
受付で「1人です」と言う寂しさを感じないカラオケ。
でも人間関係に縛られない自由なカラオケ。
相手がわからない曲を歌っても雰囲気が気まずくならないカラオケ。
そんなカラオケがあったらいいのに・・・考えた末にやっと答えが出た。
それは『ノーリアクションカラオケ』
私は計画を実行するため友人を誘ってカラオケに行った。
私「今日は『ノーリアクションカラオケ』にしようよ」
友人(またの名を被害者)「なにそれ?」
私「相手が歌った曲に何もリアクションしない。無でいるの。いい曲でも褒めない、知らない曲でも何も言わない。それが『ノーリアクションカラオケ』」
友人「・・・・わかった」
私は歌った。自由に歌った。
マイナーなバンドの曲。
最新のアイドルの曲。
大昔のドラマ主題歌。
ラップ部分がわからないあの歌も。
友人も割と楽しそうだった。でも私はリアクションはしなかった。
「この歌良いね」も「これ誰の曲?」も言わない。
ノーリアクション、それがこのカラオケのたった一つのルール。
誰も傷つかない、それが平和な世界。
しがらみから解放されたカラオケは、とても楽しかった。
音楽の力ってすごい。
歌の力ってすごい。
歌うって楽しい。
ここまで書いてみてやっと気づいたことがある。
こんな茶番(?)に付き合ってくれる友人がいる事。それが歌よりもずっと力強いことだった。ずっと大切な事だった。
やっと気づいたよ、友達よありがとう。
最初のコメントを投稿しよう!