欲望の歌

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 赤髪の女についていった私たちは、夜の東京のいかがわしい街中を歩いていく。繁華街の路地裏にあった不気味なライブハウスに私たちは連れていかれた。入口からではなく、裏口から入った私たちは、いきなり舞台に立たされた。  「なんだよ……これ」 舞台の上から見た観客席は、あまりに猥雑なものだった。  脱ぎ捨てられた服。おびただしい血痕。酒池肉林。白骨化。  どうしたら、こうなるかわからない混沌の中に酩酊状態の人間たちが叫び、狂乱している。 「あなたは、ここで歌うの。さっきの欲望の歌を歌いなさい」 女はそう言うと、ヴァイオリンを構えて、さっきのメロディーを奏で始めた。  私は、欲望のままに歌った。今まで抑えてきた欲望を歌に乗せて、叫び続ける。観客席では、歓喜の声が広がり、狂喜乱舞していた。気づけば、乱闘が起こり、反町の首が転がっていた。  何が起きても私は構わずに、激しく踊り狂う観客に歌で応える。この空間は欲望に満ちていた。欲望は歌と踊りの中にあった。この歌を骨と皮になるまで私は歌う。何も叶わなくても、欲に溺れれば空腹さえも忘れていられるだろう。だから、私は恐怖を忘れるために叫ぶことしかできなくなったのだった。ヴァイオリンの女は笑い転げ、悪魔のように私を煽っていた。
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