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墓参り
「春真、お前どうして」
死んだはずじゃ、という言葉は出てこなかった。自分とお揃いの制服。風になびく栗色の髪。冬弥(とうや)はもう一度目を擦る。恋焦がれたその姿がそこには確かにあった。
「久しぶり、冬弥」
無邪気に微笑んで見せる彼。その声は記憶と寸分も違わない。胸がどくりと脈打つのを感じた。手が震え、喉がからからに乾く。
「……おかえり、春真」
やっとのことで絞り出した声は掠れていた。春真は、にっこりと目を細める。夜の帳が下りた夏の空に、季節外れの桜が爛漫と咲き誇っていた。
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