◇◇村上健司◇◇ 邂逅

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というわけで来週のキャリア採用に合わせ、俺は浅見さんお勧めの美容室をネット予約し、これからそこに向かう。  いきつけの美容室じゃなく、南青山にある人気の店だ。普段使いの黒のダウンジャケットを羽織り、斜めがけカバンで店に向かう。 店につき、流線型のドアノブを引いて、おっ、と軽く息を呑む。 さすがにめちゃくちゃオシャレだ。森林みたいないい匂いがする。 いつも行っている店より格段に広く、美容師もたくさんいる。ヨーロッパの雰囲気を出そうとしているのかカウンター周りの壁は本物のアンティーク煉瓦(れんが)を使っているようだった。 横の棚には革張りの洋書がずらりと並べられている。誰も読まないだろうにただのインテリアだ。 「いらっしゃいませ」  マネキン人形のように頭の先からつま先まで、一分(いちぶ)の隙もないメイクと服のコーディネートをした女性がにっこりと笑う。 「十一時から予約している村上です」 「はい。村上健司様ですね。そちらにおかけになってお待ちください。ただいま担当スタイリストが参ります。あ、お荷物をお預かりしましょうか? 上着もクロークに」
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