◇◇村上健司◇◇ 対峙

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俺は管理室を抜けてビル内に入った。潜入成功だ。IDカードを通していないから俺はビル内にはいないことになっている。 「服部さん、ありがとう! 服部さん、何時までいます?」 「12時で交代ですよ。その後は岡原って者です。 副社長を管理室、通して外に出してやってくれ、って申し送っておきますんで」 「助かりますー!この恩はコンビニの夜食で!」 入った記録がないわけだから、出る時もIDカードは使えない。管理室を通らせもらう手筈(てはず)を整えておく必要がある。  俺は服部さんに手を振るとその場を走り去った。その足で四十二階の多目的ルームに向かう。そしてここは本物のIDカードを使って開ける。 ゲート管理で、ビル内にいるかどうかは判断されるから、ここでIDカードを使ってもオフィスのボードには表示されない。  俺のパソコンを狙ってここに来るなら、社員が全部いなくなってからだろう。でも新人の彼女が、誰もいなくなるまで残っているのは不自然だ。 退社したふりをしてどこかに隠れていたとしても、ビルの出入管理ボードで、ビル内に留まっていることはわかってしまう。  ここにくるのは全員が完全に退社した後だ。それならIDカードのランプがついても誰も目にすることはない。 だけど問題もある。ビル内のほとんどの社員が出てしまえば、通行量の多いいくつものゲートがあるエリアはほぼ無人になる。 そこで逆にビルに入ろうとすれば、警備員の目に止まる可能性が高い。
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