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忘れ物をしたとか、急ぎの仕事を思い出した、とかそんな言い訳が妥当かな。だいぶ危ないけどな。
彼女が深夜にうちのビルに逆戻りしてきたなんて、Canals社員の誰かに知られたら面倒なこと極まりない。
でもそんな些細なことは、問題ではないのかもしれないな。
彼女はボードで確認して、俺がビル内にいないと思っている。Canals社員も全員が退社している。それが一番肝心なのだ。
ガラス張りじゃない、警備員もほとんど来ない、都合のいい待ち合わせ場所を作ってやったよ。
俺はここに来た。果たして彼女がこんな深夜のオフィスに来られる? 都心のど真ん中にあるこのビルは、女子でも危なくはないはずだ。
アプリ開発の主導をしているのは、同じキャリア採用で入ってきた赤堀さんだ。
赤堀さんがいないのに、ひとりオフィスに残って作業できるほど実力があると周りは思っていない。今作っているアプリのコードは複雑で難しい。
今回の三人のキャリア採用の中で、コード作成に関して一番実力があるのは赤堀さんだというのが、デジタル統括本部の周知事実になっている。
でも実際は違うよな。
爪を隠し、スキルチェックでは採用されるだろうレベルの実力にうまくとどめていた。
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