◇◇村上健司◇◇ 対峙

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「おっ……」 手にしたスマホの一部分が唐突に赤く光ったことで、俺は思わずソファから起き上がった。入ってきた。IDカードを使いビルの中に入ってきたのだ。 心臓が急激に回転数を上げる。 真っ直ぐこの階にくるか? それとも念には念を入れ、一度オフィスを覗き、出入管理ボードで誰もいないのを確認するのか? どっちにしろ、ここに来る。 そして俺のパソコン本体で、パスワードを探し当てる操作をするんじゃないかと考えている。 オープンソースを使って作った外部からの侵入防御ソフトによって、事前にパスワードを探るパスクラックはできないはずなのだ。 パスワードがわからず起動しないパソコンで、どうやってそれをするのかはわからないけれど、俺なんかには理解できない高度な技術があるんだろう。 ハッカーとは。 多目的ルームとの間仕切りを開いたすぐ横の壁に背を預け、神経を研ぎ澄ませ、息を殺す。 結構な時間がたったような気がする。 ピッという機械音の後、ドアが開けられた。誰かが入ってきてパソコンの乗る机の前に座ったらしい。 かばんから何かを出しているような音がする。しばらくののち、キーボードを叩く音が聞こえてきた。 どういうことだ? もうパスワードがわかったのか? なんらかの方法でパスワードクラックをされていた?
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