◇◇村上健司◇◇ 対峙

8/52

299人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
俺は慌てて、でも慎重に多目的ルームを覗く。 俺に斜め後ろを見せる形で作業している。 自分のパソコンと、俺のパソコンをケーブルで繋ぎ、操作しているのは前者の方だ。 俺はできるだけ音を立てないように間仕切りを開け、応接室から多目的ルームに入って行った。 「月城」 月城は肩をびくつかせた。 集中していたのか、まさか人が潜んでいると思いもしなかったのか、間仕切りを開けても声をかけるまでは気づかなかったらしい。 ブラウンのロングコートにマキシ丈のスカート。コートの下は昼間と同じ格好だった。 「何してるんだ。それは俺のパソコンだぞ」  ゆっくり振り向くと俺を降り仰ぎ、大きな目を限界まで開いた。 「盗聴器を仕掛けたのも君だろ。会話を聞いてここに俺のパソコンがあると知った。外部からのアクセスで失敗したから、本体パソコンから情報を流出させるしかないと判断したわけだ」
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

299人が本棚に入れています
本棚に追加