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月城は夢でも見ているような表情で、まだ口を開くことができないでいる。
「なんでこんなことをやってる?」
「……わたしだって、わかってたの?」
「そうだよ。最初から全部が演技だろ? 美容院の俺の予約をハッキングして調べ、先に自分が終わるような時間に予約を入れた。わざとダウンジャケットを取り違えて、俺と接触を持って、自分を売り込んでおけば、Canalsのキャリア採用に有利になると考えた。違うか?」
「どうして……」
「もちろん最初からわかってたわけじゃない。だけど思えば初めから、何かはわからないが引っ掛かるものがあった。だから俺はスタバで月城に会った時、感触がよくてすぐにでも入社してもらいたいと強く思ったのに、推薦はできなかった」
「そうだったんだ…………」
「ずいぶん後になってから引っ掛かりの正体に気づいた。電報堂のSNS広告の部署が最近、大掛かりな改変をしたって話を思い出したんだ。まだ内部事情だったかもしれない。SNSを一括りにするんじゃなく、プラットフォームごとに細分化したって話だ」
「…………」
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