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「友達に囲まれて笑ってるこの子だよ。月城一颯。わかるだろ?」
「友達……?」
月城は、おそらく大いなる葛藤と戦いながらも、好奇心に負けておとなしく俺の用意した椅子に身を沈めた。
数人の女子の輪の中で、月城は満面の笑みで両手でピースサインをしている。今より少し長い、今と同じようにサラサラの髪。
月城も同じ卒アルを持っている。
記憶を失ってからも何度も見たものかもしれない。そういうところから親族は記憶を取り戻させようとするものだろう。
いや……。いやいやいや……。もしかしたら……。
思い当たってしまった可能性を今は表に出すことはやめよう。
「え……笑ってる?」
思わず漏れた声には盛大に驚きが含まれている。月城の反応は、明らかに初めてのものに接するそれだった。
「こっちが俺だ。俺は身長がこの頃より二十センチ以上伸びてる。面影があるかどうかはわかんないけど」
俺の方も男子数人で入り乱れているふざけた画の中で、歯を見せて笑いながらピースサインをしている。
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