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海外事業部がアメリカでの大きな仕事を取り付けた時に、創業メンバーで退社後に打ち上げをした。
場所は居酒屋だけど、リモートの顔合わせがあったから全員スーツ姿だった。
俺があれこれ説明しながら写真を見せていく間、月城はひと言も口を挟まなかった。
何を考えている?
「月城?」
月城はおそらく、ひと通り俺の写真を眺めたと思う。
けれど今、凝視しているのは、最初に見せた中学の卒アルだった。
放心したように、食い入るように俺が最後に開いたページに視線が張り付いたままだ。
「月城……君の過去だよ。ちゃんと見たいだろ?」
俺は中学の卒アルを取り上げ、月城の方に差し出した。
「……いいの?」
「ああ」
やっぱり月城は、記憶を失ってから、このアルバムを親族から見せてもらったことがない。
普通だったら、アルバム類なんて、記憶の復活のために一番先に見せるべきものだろう。
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