◇◇村上健司◇◇ 対峙

24/52

288人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
「……そう」 ここまで話してくれるってことは、俺のことはもう疑っていない? 俺の話を信じるまではいかなくても、話を聞く余地があると、判断してくれたってことなのか? 「免許も見る? たぶんだけど未成年無免許運転で人身事故を起こしたなら、年齢的にもゴールド免許は無理じゃない? 偽造じゃない。なんならこの免許持って免許センターに行こうよ」  月城は黙って(うつむ)いていた。 答えない月城に構わず、財布の中に入っている免許証を出してきて、彼女の方に差し出す。 月城は一応、視線を免許証の上に落とした。 「俺の事、信用してくれる気になった?」 「わかんない……。頭の中がぐちゃぐちゃで。だってここ数年、ずっとCanalsの副社長、村上健司が両親の(かたき)だと思ってた」 「つまり、今回のCanals社員の個人情報を流出させようとしたのは、俺への復讐だったって事? たまたま、どこかで俺の名前を目にした。両親を死亡させた被告の名前と同じ。歳も近い。で、俺を窮地に(おとしい)れようとした? 月城ひとりの判断?」 「……」 「違うよな。さっき叔父さん、って言ったもんな。対峙(たいじ)することがもしあったら、年齢は偽ってるから、その証拠として偽装の身分証明書を見せられる、なんて言ってたもんな。誰かに指示されてるんだろ? 俺が両親の仇だって入れ知恵されたんだろ?」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

288人が本棚に入れています
本棚に追加