◇◇村上健司◇◇ 対峙

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月城はかすかに開いた唇をわななかせ、放心している。  俺は椅子から立ち上がり、長テーブルをまわって月城の隣にきた。そこで月城の目線が近くなるようにしゃがんだ。 「月城は、おそらくそいつのことをめちゃくちゃ信用してる。でなきゃこんな犯罪行為に手を染めたりしない。そういうやつじゃなかった」 「……そんなの。わたしのことなんてわかんないじゃない。……仮に、ホントに一時期クラスメイトだったとしても」  わかるよ。その一時期、俺はずっと君を見ていたから。 「なあ、月城。記憶って全然ないのか? 全く覚えてないのか?」 「ううん……。両親と妹の事ははっきりとじゃないけど、覚えてる。あとは、事故の前後とか、ところどころ具体的に覚えてる事もある。それはわたしの創作なんかじゃない」  その中に俺はいなかった。当たり前か。  でも、それなら、もしかしたら記憶は戻るかもしれない?  少しは覚えているなら全くの白紙状態よりは、糸口みたいなものはあるように思える。 なのに、その叔父さんとやらは、アルバムさえ見せなかった。
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