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いや、実家に行って、アルバムを見ないなんて、そんなことがあるのか? 実家なんてアルバム以前に記憶の宝庫だ。
まさか実家にも連れて行かなかった?
「今までどうしてたんだ? 中二で親がいなくなったなら、誰かに保護されて、育ててもらってたってことだよな。妹の二葉ちゃんだって難しい病気になっちゃったんだろ?」
「そう。記憶を失った娘と、生きることに絶望して声を出せなくなった娘。すごく大変な娘二人を引き取ってくれたのは叔父さん夫婦。自分の息子がひとりいたけど、その子と分け隔てなく育ててくれた」
「恩があるんだ」
月城は黙ってうなずいた。
「じゃあ今回、こんな危ないことを月城にやらせようとしたのは、どうして?」
「……わたしが、被告人の村上健司を、すごく恨んでるのを知ってるから。……わたしの無念を晴らそうとした」
俺から視線を逸らせたまま、月城はぽつりと答えた。
まだ俺を完全に信頼はしていない。俺の言葉よりも、育ての親の〝叔父さん〟の方が強い。
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