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今の言葉は百パーセントの本心じゃなく〝叔父さん〟を庇っている。
なぜそう思うのかって、月城は、自分を優先して人の迷惑を顧みない性格じゃないからだ。
俺への復讐のために個人情報を流出させるなんて、ネットに晒れた他人に絶大なる悪影響が及ぶ。
そんなことを、いくら俺が憎くても自分の判断でできる人間じゃない。
どうしても復讐したいなら、ピンポイントで俺を狙うはずだ。ハッキング能力が高く、元が割れない自信があるんだろうから、俺の個人情報だけを晒せばいい。それこそ銀行口座でもなんでも。
捏造だってできるはずだ。
「耳に優しい情報じゃないと思う。でも現実的に考えてみてくれよ。その叔父さんは、どうして今まで月城に、たとえばこの卒アルを見せなかったの? 他の写真は見た?」
「見てない」
「どうして? 普通、記憶喪失になったら記憶を回復させようと、アルバムとか録画とか、そういうのから始めるもんだろ?」
「……無くなったから。わたしと妹が入院してる間、誰も住んでない実家が火事になって、全部燃えたの」
「なんだって?」
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