◇◇村上健司◇◇ 対峙

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「月城の家、どこだか俺わかるよ。学区内で、実家からそう離れてないから。月城の家は江戸川区じゃない」 「わ……わけわかんないよ」 「行こう、君の家はおそらくまだある」 「ええっ……」  しゃがんでいる俺と椅子に座っている月城。 はっきりと視線が絡んだ。澄んだ瞳。昔はドキドキしたその瞳に、今は鎮痛な色がこびりついている。 月城の身の上を聞いたからそう見えるわけじゃなく、最初に会った時から、どこかで感じていた。 明るくはきはきした昔と変わらない喋り方をするのに、瞳の奥には何か得体の知れない暗さと寂しさ、そして危うさがあった。 光と影が混在する印象は人を、いや、俺を惹きつける。 これも相手が月城だからかもしれない。 「行こう、月城」  俺は立とうとしない月城の手の甲を上から握り、無理に立ち上がらせた。 びくりとして一瞬振り払うような動きをする彼女の手は、結局そうはしなかった。 彼女は助けを求めている。 そう思えて、振り払われるのがすごく怖いのに、すぐには離せなかった。 しっかり立ち上がったところで、ゆっくり離す。
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