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多目的ルームから廊下に出ても無人だ。この階には夜中、見回りなんか来ないんだろうな。
「月城、夜中の一時過ぎにゲート抜けて、よく見咎められなかったな。警備員さんいただろ? てか、これから出るのが面倒だな」
夜中のゲートエリアは無人だろうが、そこに直結の管理室には防犯カメラのモニターがある。
ずっと見張ってるようなことはないだろうが、動きのないはずの場所が動けば気づく可能性もある。
「まだ大丈夫かもしれないよ。外の喫煙所で小火があったって近所の人を装って電話したの。燃えカスに岡原さんが吸ってるタバコの銘柄入れておいて、そのことも伝えたの」
「えっ」
「自分が吸ったタバコで小火出したと思って、今頃片付けしてるんじゃないかな。火は使ってないよ。燃えかすをめちゃくちゃばら撒いておいた。あそこを現状復帰するの、時間がかかると思うな」
「月城、用意周到――!」
そうやって夜中に見咎められずにビルに入ってきたのか。事件か何かなければ過去のモニターを調べることなんかないもんな。
「こっち側の管理室、夜中はひとりみたいだからさ」
「調べてんなー。将来有望だぜ」
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