◇◇村上健司◇◇ 対峙

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時刻は午前二時を過ぎている。それでも大通りに出ると案外簡単にタクシーが捕まった。 いちいちナビをするのも面倒で、とりあえず実家の住所を告げ、近くまで行ってもらう。 二人の通った小学校の前を抜けたあたりから、俺は月城の家までをタクシー運転手さんにナビする。 目的地に着き、カードで料金を支払うとタクシーを降りる。  目の前に瀟洒(しょうしゃ)な造りの邸宅がある。形は違えど他の邸宅と調和がなされ、かつては地域の一部としての景観を保っていたんだろう。 「あるよ、月城、ちゃんと」  ただ、現在は他と圧倒的に違うところがあった。人が住んでいない。  敷地内に植えられた木から、つる系の雑草(ざっそう)が垂れ下がって伸び、腰あたりの高さの門扉にいく筋も覆い被さっていた。俺はその雑草を手で避けた。 「月城、ほら」 門扉の横の壁に〝月城〟という表札が現れる。 月城の表情が青白い街灯と月明かりに浮かび上がる。 まなじりが裂けるほど目を見開き、半開きになった口元をゆっくりと左手が覆う。 驚きで声も出ないらしい。 飾り格子の門扉の向こう側は、玄関まで飛び石を使った通路になっている。 両側は、庭ってほどの広さはないものの、それなりのスペースがあり、余裕を持って建てられた邸宅だとわかる。
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