◇◇村上健司◇◇ 対峙

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俺が先に立って雑草を右手でかき分けて道を作り、左手をつないだ月城が、(うつむ)きがちについてくる。  玄関のドアノブを動かしてみたけれど、もちろん鍵がかかっている。 「月城、ここで待ってて。リビングにまわってみる」 「嫌だ……」  つないだ手に月城の方からわずかに力が加わった。 「わかった。一緒に行こう」  二人でリビングにまわる。全面ガラス張りの大きなリビングの窓は、出入りができる仕様だ。 ラッキーなことにクレセント錠だった。 「月城、ちょっとだけ離すな。大丈夫だから」  断ってその手を離す。 「ご……ごめんなさい」  月城が一歩後ずさりする。 「動揺して当たり前だって。こんなの。ちょっと離れてて」  俺は背負っている通勤用リュックの中から、ガムテープを出した。応接室にあった備品だ。 それから雑草の生い茂る庭に、それなりの大きさの石を見繕うために足を踏み入れた。 昔は花壇だったらしい場所には煉瓦が並べてあったから、そのうちのひとつを拝借した。 おあつらえ向きだ。
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