◇◇村上健司◇◇ 対峙

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 月城の記憶喪失は、もしかしたらそこまで根深いものじゃないのかもしれない。家族の記憶はあると言っている。 妹のこともわかる。 それなら、昔の記憶を刺激するものに触れれば、充分回復する余地はあるんじゃないだろうか。 「月城の部屋はどこ?」  一階にあるのは、大きなリビングとキッチン、バストイレだけのようだ。 「二階……?」 「だよな、普通。行ってみる?」 「うん」  そう言ったものの、足は前に進まない。 「俺、一緒に行ってもいいの?」 「……わたしが、先に入る。廊下で待っててもらってもいい?」  くすりと笑いが漏れそうになる。 自分の部屋がどういう状態になっているかわからない。 そう思っているんだろうな。 「いいよ」  二人で埃だらけの階段を上って二階へ。
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