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月城の記憶喪失は、もしかしたらそこまで根深いものじゃないのかもしれない。家族の記憶はあると言っている。
妹のこともわかる。
それなら、昔の記憶を刺激するものに触れれば、充分回復する余地はあるんじゃないだろうか。
「月城の部屋はどこ?」
一階にあるのは、大きなリビングとキッチン、バストイレだけのようだ。
「二階……?」
「だよな、普通。行ってみる?」
「うん」
そう言ったものの、足は前に進まない。
「俺、一緒に行ってもいいの?」
「……わたしが、先に入る。廊下で待っててもらってもいい?」
くすりと笑いが漏れそうになる。
自分の部屋がどういう状態になっているかわからない。
そう思っているんだろうな。
「いいよ」
二人で埃だらけの階段を上って二階へ。
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