300人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
「鍵は?」
「……思い出せない」
月城と妹に、重要書類の場所を教えていたなら、鍵のありかも伝えていたはずだ。
「十中八九、探していたのはここの鍵だな。金庫ならそのまま運び出すってこともできるけど、このタンスじゃな。めちゃくちゃ重そうだし。壁に固定までしてある」
「なんか、ほんとに徐々に思い出してきた」
「無理すんなって。そんなに一気に思い出そうとして、大丈夫なのか? 病院行って相談したほうが良くないか?」
「今日、全部思い出すの! そうしないとまた忘れそうで怖い」
「そっか」
「ふ……副社長」
「あ、はい」
副社長って呼び方にものすごい違和感を感じる。今この瞬間、俺の中で、月城はもう昔の同級生以外の何者でもなく、最後のクラス会から十二年後に再会して、また強烈に気になり始めている女の子だ。
「ごめんなさい!」
月城はすごい勢いで俺に深く頭を下げた。
「えっ……」
「本当にすみませんでした」
「ああ」
最初のコメントを投稿しよう!