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俺はヒラっと手をあげて部屋から出ようとした。五歩くらい歩いたところで、先に進めなくなった。ダウンジャケットの裾を掴まれている。
「なんだよ、月城」
「えーと……。あれっ、なんか手が引っかかった……かもしれない」
ぶぶっと吹き出しそうになる。計算済みに簡単に引っかかる月城が可愛い。
君は大きい虫が苦手で、特にGは名前を言われるだけで鳥肌たてるほど大っ嫌いだったんだよ。
そのくせ、掃除の時間に出てくると本気で逃げ回りながら無駄な殺生はやめろ!とかバカ真剣に叫ぶちょっと変わったやつだったんだよ。
「素直じゃないんだよ。俺のが有利だからな? 月城が虚勢張って言ってんのか本音なのかすぐわかるから。昔と性格変わってないもん。めっちゃ顔にでる」
俺は手のひらの一番下、骨の部分で月城の額を軽く押した。
「……」
「自分の部屋が気になるんだよな? そこには月城の中学時代がそのまんま残ってる。俺はここにいるよ。だから行ってこいよ。どの扉だか思い出した?」
「でも……悪い。こんな時間まで」
「俺も聞きたいことはあるんだよ。なんでCanalsを狙ったのか、とかな」
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