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「そうだね。それもちゃんと話す」
「じゃ、行ってきなよ」
「……うん」
月城は歩を進めようとしない。
「はいはい。Gが怖いんだよね! 一緒に行こう」
「あっ! わたしが最初に入るね! いいって言うまで入ってきちゃダメね!」
月城は俺に背を向け、歩き出した。
「はいはい、承知しました。月姫さま!」
おもむろに立ち止まるから、俺はつんのめって月城の背に突っ込みそうになった。
月城はけっこうなスピードで振り返る。サラサラしたボブが宙に浮いて、スマホの光の中でしなやかな半円の軌跡を作った。
「なんだよ」
闇の中で濡れたように光る双眸が、強く俺の顔を見据えてくる。
「穴が開くって。そんなに見られると」
「ごめん……」
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