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わたしは机の前の椅子に座ってみた。
不思議な感覚がする。ここで勉強をしたり絵を描いたり考え事をしていたと、リアルに実感できる。
ママとパパの部屋の時と同じで、徐々に記憶のベールが剥がされていくような感覚。触れられそうなのに、手を伸ばせば引いていってしまう記憶の波が、もどかしくてたまらない。
ドラマや漫画から察するに、記憶が戻る時って閃きの瞬間みたいに一気にくるものじゃないの?
「月城って、K大に入りたかったんだ? ここを最後に出たのってまだ中学だっただろ? 具体的な目標大学まで決まってたの、すごいよな。きっとやりたい事が明確で、それに合致する学部学科があったんだろうな」
「K大?」
「ほら、ここに貼ってある」
机の、座ると正面にくる位置に〝目指せK大〟と書いた紙が貼ってあった。
「K大……。わたし、K大で何がやりたかったんだろ……」
「俺、K大だぞ。ついでにCanalsの創業メンバーは全員K大だ。大学時代に仲間内で起業した会社だからな。なんかうちの大学って、他にない特色のある学部学科があったのかな?」
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