◇◇月城一颯◇◇ 覚醒

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「もう明け方じゃん。俺、多少食料買ってきたぞ。それ食ってちょっと寝るか」 「ここでかー……無理だよ」  自分の布団といえども十二年くらいは使っていないわけで、埃もそうだしダニとかすごくたくさんいそうだ。 「まあ無理だよな。さすがに。まだGを見てないだけありがたいと思うぞ」 「それを言わないでよー」 鳥肌がたつんだよ、ホントに。 村上くんはGって伏せて言ってくれるだけまだ助かるよ。  わたしは書籍調の青いノートを振り上げながら、立ち上がった。とたんにめまいがし、自分の体が大きく傾ぐのがわかる。 「月城! もう!」  倒れそうになってしまったらしく、村上くんが手を差し伸べてくれる。二人並んで座れるベッドに誘導される。 不思議だ。 ずっと長いこと憎んできた相手なのに、この人は両親を奪った事故とは無関係だと確信してから、恨みも怖さも警戒心も消え失せている。 当たり前か。 過去、刷り込まれた人物像が違う人間のものなら、わたしが知っているのはCanals副社長としての、上司としての、村上健司だ。   入社以前から、村上健司の会社だと知っていても、Canalsに惹かれていたことは否めない。
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