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外がかすかに白み始めているようだった。村上くんはコンビニおにぎりのラップをバリバリ剥がして、のりを巻こうと奮闘している。
手が埃だらけなのに、あのままじゃおにぎりについてしまう。
順序立ててやれば簡単なのに、そこはガン無視だ。
「もう……何やってんのよ。わたしがやるよ。この不器用!」
わたしは村上くんの手からおにぎりを取り上げた。
「おっとー! 月城こそ何やってんだよ」
わたしが手を離したから落としたらしいパンを、村上くんは外袋ごと見事にキャッチしている。
わたしが村上くんのおにぎりを奪おうと身を乗り出し、村上くんがわたしのパンをキャッチしようと前傾姿勢になっていた。
その体勢のまま、お互いの顔を見たから、ごく至近距離で目が合ってしまう。
「うおっ!」
村上くんは声をあげて後ろに飛びすさるように移動し、その結果、ベッドから落ちた。
バリバリ仕事をこなすいつもの副社長とのギャップがおかしくて、わたしは声を漏らして笑った。
「何やってるのよ、もう」
「月城……。よかった。そうやって笑えて」
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