304人が本棚に入れています
本棚に追加
/254ページ
のそりと床から立ち上がった村上くんの表情には、わたしを心底心配している色が、はっきりと浮かんでいる。
両親を亡くしてから、誰かにこういう顔をされたことがあっただろうか。
血の繋がる叔父さんでさえ、こんな顔を見せてはくれなかった。
今まで無自覚だったけれど、相当に緊張のしずめだったらしいわたしは、体から急激に無駄な力が抜けていくのがわかる。リラックスしていく。
「はぁ……。やってらんなくて気が抜けた」
わたしはワンカップの蓋を開け、一気に飲み干した。小さいパンをひとつ食べただけの胃の腑が、一瞬にして燃える。体が温まる。
「おいー。なんて飲み方するんだよ」
「わたし結構強いもーん! 村上くんはわたしの記憶が小学生で止まってるんだよ。もう二十六だよ?」
わたしは二本目のワンカップに手を伸ばし、蓋を開けた。
「えっ……。まじか。やめろって。ほとんどモノ食ってないんだぞ。それは防寒用――」
「だからやってらんないんだってばー」
「……まあ、それはそうだよな」
最初のコメントを投稿しよう!