◇◇村上健司◇◇ 邂逅

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ダウンは年代別って感じでバカ売れしているブランドがいくつかある。街によって、制服か! ってくらいみんなそのブランドを着ている。 斜めに外して買ったつもりだったのに……。 そうそう被るブランドじゃないと思っていたのに……。 「だけど、まあ……黒のダウンは被るよな」  その中にたまたま俺と同じブランドを選んだ男がいるってことだ。サイズからして男だろう。俺のダウンには何も入っていないはずだ。 とりあえず鍵を開けて家に入る。 人の名刺を勝手に開けるのは申し訳なくて気が進まないけれど、俺は仕方なくその箱を開けて中身を一枚取り出した。 俺のジャケットに、俺を特定するものは入っていないだろうから、こっちから連絡するしか手段がない。店に連絡するという方法もあるにはあるが、まあ、二度手間だ。 どきんっ。と心臓がはっきり跳ねた。 名刺に書いてあった企業名は電報堂だった。 社会人なら誰でも知っているような大手の広告代理店、電報堂だった。総合デジタル本部 SNS広告事業課、しかも役職がチーフだった。 でも俺の心臓の高鳴りの原因は企業名や役職じゃなくて、真ん中に印字してある名前だった。 〝月城一颯(つきしろいぶき)
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