◇◇月城一颯◇◇ 覚醒

17/32

306人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
 「敵ってなんだよ、ちゃんと説明したじゃん、起きようぜ。俺、超寒いんだけど」 「うーん……」  わたしの下に敷いてあるふかふかの羽毛布団が引っ張られるから、取られないようにしっかりくるまる。 足が寒いなあ。どうしてこんな中途半端な長さなんだろう、この布団。 それになんか、男っぽい匂いがするのはどうして? 嫌な匂いじゃない。 その人らしい温もりに、ほんの微かな男性用パフュームのような……。 「おーい。住所言えないと、送ってけないじゃん」 「忘れた。記憶喪失なの」 「えっ? マジで言ってんの? 記憶喪失って新しいこと覚えられないわけじゃないよな? すごい複雑なコード操ってるやつがなんで」  コードかあ。 「それは得意」 「もう……またこのパターンなのかよ? 記憶喪失って、どういう……?」  疑問の言葉を呪文のように呟く誰かが、わたしの体を起こした。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!

306人が本棚に入れています
本棚に追加