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「敵ってなんだよ、ちゃんと説明したじゃん、起きようぜ。俺、超寒いんだけど」
「うーん……」
わたしの下に敷いてあるふかふかの羽毛布団が引っ張られるから、取られないようにしっかりくるまる。
足が寒いなあ。どうしてこんな中途半端な長さなんだろう、この布団。
それになんか、男っぽい匂いがするのはどうして? 嫌な匂いじゃない。
その人らしい温もりに、ほんの微かな男性用パフュームのような……。
「おーい。住所言えないと、送ってけないじゃん」
「忘れた。記憶喪失なの」
「えっ? マジで言ってんの? 記憶喪失って新しいこと覚えられないわけじゃないよな? すごい複雑なコード操ってるやつがなんで」
コードかあ。
「それは得意」
「もう……またこのパターンなのかよ? 記憶喪失って、どういう……?」
疑問の言葉を呪文のように呟く誰かが、わたしの体を起こした。
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