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キーをかざしてオートロックを抜けると、そこは吹き抜けになっている。
真ん中に竹が何本もセンスよく伸び、その足元を熊笹と玉石が取り巻くセンスのいいエントランスフロアが広がっている。和洋折衷で超クールだ。
村上くんに似合っている。
「ここの突き当たり」
エントランスフロアから一番遠い、一階の角部屋のようだ。
「ただいまー」
ひとり暮らしだろうに、習慣のように普通に声を上げる。
……ていうか、玄関に女性用と思しき厚底のスニーカーが置いてあった。
村上くん、同棲してるの?
彼女がいるところにわたしを連れてきたの?
わたしはそのスニーカーを凝視し、身体とともに心も固まった。そこから自分の中で昂っていた気持ちが緩やかに雪崩を起こし始める。
急激に周りの色が失われていった。
「あ、忘れてたわ……もう、あんまり想定外のことが起こり過ぎて」
「え……」
「おお、チャピ、ミケ。昨日は悪かったな」
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