◇◇村上健司◇◇ 邂逅

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「嘘だろ……」  本当にあの月城?  小学生の頃に俺が好きだったあの月城? なんで男性サイズのダウンジャケットを? と考えて、女性でもオーバーサイズを好む人種がいることに思い当たった。 そして、考えてみれば、やっぱりこのダウンジャケットの持ち主に直接連絡を取ることはできないのだ。 名刺に書いてあるのは個人情報じゃなくて、会社の情報だ。電話番号も、メールアドレスも。個人がプライベートに使っているものを印字しているわけじゃない。 月城、かもしれない。 いやその可能性はかなり高い。俺の名前、村上健司と違ってそこらへんに転がっているようなありふれた名前じゃない。 だとしても会社に電話なんかしたら、支給された名刺を無くしたという月城のミスが知れてしまう。 やっぱり店に電話して、月城のプライベートな情報の方で、店経由で連絡をとってもらう他ない。 「あー」 ニアミス。月城と俺は、同じ空間にいたのか。 会ってもわからない確率の方が高い。 俺は小学校の卒業から身長が二十センチ以上伸びているし、月城だって、もう子供じゃなく二十六歳の大人の女性になっている。
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