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村上くんの足元に黒と茶色の猫がすり寄ってくる。
「寝るとこ、どうすっかなー。あ、月城入れよ」
黒い方の猫を抱き上げた村上くんは、すでに靴を脱いでたたきに上がっている。
「で……でも」
わたしはサイズの小さいスニーカーに視線を落としながら、戸惑いまくった。
「警戒しなくたって平気だって。忘れてたけど今日、ひとりじゃなかったんだよね」
「きょ、今日?」
そこでリビングの奥の部屋から、明らかに村上くんのものだと思われるぶかぶかのトレーナーにスエットを着た、ものすごく可愛い女の子が、目を擦りながら出てきた。
わたしより明らかに幾つも下。もしかしたら高校生かもしれない。
村上くんってそういう趣味か!
「もう! こんなに遅いならそう言っといてよ。心配するじゃん。何度電話しても出ないし」
がらがら声に千鳥足なのは、まだ目がぜんぜん覚めていないからだ。わたしの姿が見えていないからだ。
「予定外の連続でさ。悪かったな、夕凪」
「あのっ! わたし、失礼しますっ!」
踵を返そうとしたわたしの腕を村上くんが抑える。
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