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一緒に住んでいるのかと思った。
「まさか。ヤですよ、こんなデリカシーのない男。あたし、村上夕凪、妹です。兄がお世話になってます」
「とんでもないです。わたしの方が……。あ、わ……わたしはお兄さんの会社の社員で、月城一颯と申します。その……いきがかり上、大変……大変、お世話になってしまったようで」
「月城……」
夕凪ちゃんはなぜかわたしの苗字を小さく呟いて、眉間に皺を寄せた。
「実家の、近くに用事があってさ。そんで月城、酒飲んで自分ちもわかんなくなったんだよ」
「あーね。あたしにミケとチャピの世話を頼んどいて、二人で仲良く徹夜で酒盛り!」
「いや、夕凪。そういうんじゃないんだよ。そもそも俺は飲んでないし。昨日はほんとに仕事上、どうしても夜中に会社に残んなくちゃならなくて。だからお前にきてもらったんだよ。ずっと人が帰ってこないのはミケとチャピ、寂しいだろ。何より心配……。あ、ほら月城、上がれよ」
村上くんがわたしの腕を軽く叩いて促す。迷った末にわたしはとりあえず靴を脱いで上がらせてもらう。
「いいよいいよ。お兄の頭の中が仕事ばっかりなのは、知ってるし。珍しくずーっと彼女がいないと思ったら、このような綺麗なお姉様と仲良くなりかけなんだもんね。お兄、あたし帰るね」
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