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夕凪ちゃんは伸びをしながら踵を返し、ベッドルームに向かった。
「待て、夕凪。俺、ちょっと寝たら送ってくよ」
そこで夕凪ちゃんはくるりと振り向いた。
「あっ! お兄、もしかして実家の車、乗ってきたんじゃない? 月城さんが自分ちもわかんないくらい酔い潰れたなら。ママの? パパの?」
「母親の」
「じゃあ、あたしがそれ乗って帰ればちょうどいいじゃん。よかった! あたしの保険ママの車にしか入ってないからさ。そしたらお兄も、置きに帰らなくて済むでしょ?」
「そっか、なるほどな。だけど心配だなー。お前、免許取りたてだし。車庫入れヘタだし。車線変更ぎこちないし。合流もイマイチだし。あと細い道で対向車とすれ違えないよな」
「もう一年たってるよ。お兄に付き合ってもらって練習してた頃より、ずっと上手くなってんの!」
そう言うと夕凪ちゃんは今度こそベッドルームに入ってドアを閉めてしまった。
「え、免許? 夕凪ちゃんいくつ?」
「あいつ、ガキっぽく見えるだろ? でもあれで二十歳の大学生なんだよ」
「可愛いね」
「顔だけな」
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