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全部が可愛いよ、と村上くんの態度にも表情にも出ている。六つも年下の妹は可愛いものだろうな。
そうこうしているうちに夕凪ちゃんが、タイトなニットワンピース姿に着替えて出てきた。
手にはそこそこ大きなバッグを持ち、腕には丈の短いダウンジャケットをかけている。
「お兄。ママがちゃんと食べてるのか、って心配してるからさ。野菜が取れるように鍋でもやろうと思って、めっちゃ食材買ってきたんだよね。全部、冷蔵庫に詰め込んどいたから月城さんに作ってもらって」
「ごめんな、夕凪。今度なんか好きなもん買ってやるから」
「うひゃー。超期待してる。お兄の会社の羽振りがいいのはラッキー! あたしにまわってくるもん」
「ぜんっぜん羽振りは良くないからな! うちの会社今期やばいから!」
「ヴィトンの新作、いやプラダにするかな? セリーヌでも欲しいのあるんだよねー」
「……さすがに上限決めるわ。お前の言う事まともに聞いてると身ぐるみ剥がされるわ」
思わず笑いが漏れそうになってあわてて片手で口を覆った。新進気鋭グロース企業のやり手副社長も、歳の離れた妹にはめっぽう弱いらしい。
「あ、夕凪。お前、絆創膏って持ってる?」
「絆創膏?」
「うん。月城、手ぇ切っちゃったんだよ、ガラスで」
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