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きっと、この日記によって得られるものは多いはずだ。他のノートには何も感じなかったのに、この日記にだけは、見覚えがあるような気がする。
ここには強い思いが宿っている。
横になってわたしは日記を開いた。鍵付きなのにその鍵がどこかにいってしまったこともちゃんと覚えている。
一見、鍵付き日記だから開けられないように見えるだけだということも、ちゃんと覚えている。
布団をかぶり、ページを繰った。スタートは小学校の五年生の終わり、一月一日。お正月に、父親から今年は日記をつけてみたらどうだ、とこれを渡されたらしいことが記されていた。
中世の洋書のような装丁に透明カバーのついた、立派な日記帳だ。
きっと父はわたしの趣味を考え、これを選んでくれた。その頃の記憶を失っている今でも、この装丁には惹かれる。
どうやらわたしは、書くことが好きだったらしい。
海馬の底に沈んでいた記憶が掘り起こされていく。窓ガラスについた水滴が、少しずつ、でも確実に、取り払われていく。
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