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「んー!」
俺は両手を大きく広げて腱を伸ばした。
何時間も泥のように眠っていたらしい。
月城はどうしただろう? ソファから立ち上がって寝室の方に足を運び、軽くノックして小声で月城を呼んでみたけれど、返事はなかった。
まさかひとりで帰っちゃったわけじゃないよな。
恐怖に駆られた俺はドアをそーっと開けた。もし、寝ているのなら起こしたくない。
月城は、俺のベッドで横向きになり、日記帳を抱えて眠りについていた。
俺はベッドサイドに膝をつく。
何かに追いたてられているような切羽詰まった瞳が閉じられていると、彼女の寝顔はいまだ小学生の名残りが充分に感じられるほどに、無邪気であどけない。その哀しい差異に切ない気持ちがせりあがってくる。
「全部読んだのか」
頬にはいく筋も涙の跡が残り、まだ乾ききっていない。横になってずっと日記を読んでいて、そのまま眠りに落ちたんだろう。
「月城……」
我知らず彼女の頬に手を伸ばし、その涙を拭いとり、人差し指と中指の先についた水滴に唇を押し当てていた。
その瞬間、月城がうっすらと目を開けた。俺はめちゃくちゃに焦って、口元にあった右手を後ろに隠す。
これはあやしい動きだ! と気づいたけれど後の祭りで、余計に挙動不審になる。
「わたし、寝てたんだ」
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