◇◇村上健司◇◇ 約束

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 俺の不埒(ふらち)な行為に気づくこともなく、月城は呑気(のんき)な疑問を口にする。 「……そ、そうな。いや俺がガッツリ寝過ぎたから」 「当たり前だよ、村上くんは三十時間以上起てたはずだもん。今、何時?」 月城は上半身をベッドから起こした。 「二時くらい」 「村上くん、お腹すいたよね」 「そ、そうだな」  俺は胸の鼓動の速さがまるでおさまらず、それを隠そうとして、余計におかしな受け答えをしてしまっているのかもしれない。 「どうしたの?」  怪しげな心のうちが見透かされた。月城の涙とその後の自分の行動への戸惑いに、神経のほとんどを持っていかれていて、気持ちが丸裸の状態なのだ。 「いや……。日記全部読んだのかな、って……。月城、寝ながら泣いてた。もしかして少しは思い出した?」  全く平常心に戻れず、俺は黙っているべきことまで口にした。 「たぶん、ほぼ全部思い出したと、思う」 「マジか!」 大きな声が出た。 それならもう、悪人の〝叔父さん〟に見切りをつけられる、と安堵したとたん、情けないことに俺の腹が鳴った。 気まずい沈黙が一瞬流れ、その後に月城が口を開く。
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