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俺の不埒な行為に気づくこともなく、月城は呑気な疑問を口にする。
「……そ、そうな。いや俺がガッツリ寝過ぎたから」
「当たり前だよ、村上くんは三十時間以上起てたはずだもん。今、何時?」
月城は上半身をベッドから起こした。
「二時くらい」
「村上くん、お腹すいたよね」
「そ、そうだな」
俺は胸の鼓動の速さがまるでおさまらず、それを隠そうとして、余計におかしな受け答えをしてしまっているのかもしれない。
「どうしたの?」
怪しげな心のうちが見透かされた。月城の涙とその後の自分の行動への戸惑いに、神経のほとんどを持っていかれていて、気持ちが丸裸の状態なのだ。
「いや……。日記全部読んだのかな、って……。月城、寝ながら泣いてた。もしかして少しは思い出した?」
全く平常心に戻れず、俺は黙っているべきことまで口にした。
「たぶん、ほぼ全部思い出したと、思う」
「マジか!」
大きな声が出た。
それならもう、悪人の〝叔父さん〟に見切りをつけられる、と安堵したとたん、情けないことに俺の腹が鳴った。
気まずい沈黙が一瞬流れ、その後に月城が口を開く。
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