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「もし、よかったらさ、わたし、ご飯作るよ」
「えっ? でも月城、手の甲、怪我してるじゃん」
「あんなのかすり傷だよ。甲の上の方だし、防水の絆創膏貼ってもらったもん。夕凪ちゃんが食材いっぱい買ってきた、って言ってたよね?」
「そう。冷蔵庫にぱんぱんに入ってた。大学が近いからたまに来るんだけど、ここまでたくさん食材買ってきたことないから、びっくりしたよ」
そこで月城は俯いた。
「何か村上くんに話したいことがあったんじゃないかな。ご飯食べながら聞いてもらおうと思ったところに、わたしが来ちゃったから、話すタイミングを逃したんじゃないかって……、申し訳なく、思う」
「なんでそんなこと感じるの? 夕凪と会ったの初めてだよな?」
「うん。なんとなく。玄関出る時、明らかに肩の線が落ちてた。あとで、電話してあげてほしいな」
よく見てるな、人んちの妹のことまで。
起きてくるとベッドの横で、両手を腰に当て、二、三回捻るようなストレッチをした月城は、そのまま寝室を出てキッチンに向かった。
「開けてもいい? 冷蔵庫」
「あー、いいよ」
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