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二人でいただきます、と手を合わせ、俺は月城の分と自分の分をお玉でお椀に取り分けた。
「すげー美味い! 店でもこんな美味いの食ったことないぞ!」
「ほんと? 嬉しい! ありがとう」
「いや、これ、感激なんだけど!」
最初はスープだけで食べ、頃合いを見て半熟の卵を割ると、黄身がとろーりとオレンジ色の具材の上に流れる。味変のまろやかさも完璧だった。
月城の料理の腕に感心しながら、俺は妙な違和感を覚えた。
こいつ、こういうことするの、好きだったっけ?
俺は六年の時の調理実習のことを思い出していた。
「月城って、昔は料理、壊滅的だったぞ。調理実習で、俺らのグループのカレーだけ、ルーの塊が浮いてるスープみたいになっちゃって」
「えっ! そんなこと……」
月城は箸を持つ手を止めて目玉を上に向けた。
記憶を漁っているんだろうけど、さすがにそこまでは思い出さないよな。
「あったような……気がする、んだよね」
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