◇◇村上健司◇◇ 約束

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 「……マジで? そんなことも思い出せるまでになったの?」 「それね、さっきの日記に書いてあったんだ。だから思い出せたのもあると思う。わたしがルーを作る係で、確か小麦粉とかの配分を間違えて、他にもいろんな失敗が重なって、溶けない塊みたいになっちゃった……いや気まずかった、あれは」 「そう。月城が『あたし全然包丁使えない』って豪語するからルーの係になった。今から思えば一番高度かつ(かなめ)の役回りじゃん。結果、俺らのグループだけ焦げたカレー風味のスープを食った。どうやったらあんな事態になるのか意味不明だったわ」 「いや、でもさ。小学生の調理実習でルーを作らせるって意味わかんなくない? 今でこそルーから作ることもあるけど、あれ、そこそこ難しいよ? 火加減とか」 「そんなこともできるんだ。めちゃ美味いよ。すごいこれ……」  俺は手に持っていた椀の中のオレンジ色に視線を落とした。 「ありがと」 「でも月城ってさ、そういう女子が好きそうなことより、テクノロジーの進化とか、都市伝説っぽいことに興味があったように記憶してんだけど。昔、そういう話、俺とよくしてたんだよ。いつ頃には空飛ぶ車ができる、とかな」
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