307人が本棚に入れています
本棚に追加
「……マジで? そんなことも思い出せるまでになったの?」
「それね、さっきの日記に書いてあったんだ。だから思い出せたのもあると思う。わたしがルーを作る係で、確か小麦粉とかの配分を間違えて、他にもいろんな失敗が重なって、溶けない塊みたいになっちゃった……いや気まずかった、あれは」
「そう。月城が『あたし全然包丁使えない』って豪語するからルーの係になった。今から思えば一番高度かつ要の役回りじゃん。結果、俺らのグループだけ焦げたカレー風味のスープを食った。どうやったらあんな事態になるのか意味不明だったわ」
「いや、でもさ。小学生の調理実習でルーを作らせるって意味わかんなくない? 今でこそルーから作ることもあるけど、あれ、そこそこ難しいよ? 火加減とか」
「そんなこともできるんだ。めちゃ美味いよ。すごいこれ……」
俺は手に持っていた椀の中のオレンジ色に視線を落とした。
「ありがと」
「でも月城ってさ、そういう女子が好きそうなことより、テクノロジーの進化とか、都市伝説っぽいことに興味があったように記憶してんだけど。昔、そういう話、俺とよくしてたんだよ。いつ頃には空飛ぶ車ができる、とかな」
最初のコメントを投稿しよう!