◇◇村上健司◇◇ 約束

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「そう……なのかな」 「料理が好きになってたなんてな。人ってわかんないな。いつからやりだしたの?」 「中学……かな。好き、っていうか……。めちゃくちゃ嫌いではないかもしれない。食べてくれる人がいれば作ったかいもあるし」 「叔父さんの家に行ってからってことだよな?」  月城は視線を小刻みに左右に揺らし(うつむ)いた。  苦労したんだな。と、思う。手際の良さから考えても、かなりの頻度でやっていたはずだ。強要されたわけじゃないのかもしれないけど、無賃(ただ)で置いてもらうことに対して、無茶苦茶な負い目があったはずだ。月城の性格なら。  それにしても、実家で思い入れのある日記を見つけることができ、それを読んでからというもの、月城は驚異的なスピードで昔のことを思い出している。 漫画やドラマと違うじゃんか。 今まで、どれだけ昔の記憶から遠ざけられて育ってきたんだろう。 「月城、あのさ」 「ん?」  箸を口元で止めて、月城は首を傾げた。
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