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「みんな、いきなり連絡が取れなくなったわたしのことひどい、って思ってるだろうな」
「連絡とって、こういうわけだった、って説明すればいいじゃん」
「……うん」
俯いて、とりあえず小声で肯定の意思を示した月城だけど、そうするつもりはないように見えた。
事情がある。何か月城にとって、昔の自分に戻って昔の友達と昔と同じ交流をすることが憚られるような、高い障壁がまだある。
「月城にとってはきつい事実だろうと思うよ。だけど月城が叔父さんにやられたことは、人権を無視した所業だよ。当時の携帯に友達から連絡だってきてただろうに」
「そうだね……。だけど、育ててもらったから」
「携帯は?」
「なかったって言われてる。交通事故だし、それはそうなのかも……」
自分が何を隠されていたのかを知ってさえ、まだ〝叔父さん〟の罪を軽くしようとしている月城に、思わず小さな舌打ちが漏れた。それを聞いてしまったんだろう月城は、唇を引き結んで視線を伏せた。
やべえ。
月城は今、もっともセンシティブな時期だ。もっと気持ちを尊重した話し方を意識しないといけない。
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