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病弱な専業主婦の叔母さんと、月城よりひとつ年上のひとり息子、洋太と三人暮らしのところに、事故で記憶を失った月城一颯と、月城二葉が迎えられた。
記憶喪失の娘と、両親の事故によりうつと失声症を患っている娘二人を引き取ってくれた。
家を変わったことで、地元の中学から叔父さんの家の学区の中学に転校した。
入院しているうちに転校の手続きが取られていたそうで、挨拶もなしにもといた中学を去った。
月城にしてみれば、深くもやのかかった記憶しかなく、ゆえに執着することもなかったらしい。執着心が薄かったのは他の理由もある。
叔父さんに、もとの小学校でも中学校でもいじめに遭っていたようだと伝えられた。
けれど自分の中ではなぜか学校が恋しくて、叔父さんの主張には漠然とした不自然さを感じてもいたそうだ。
それでも忘れて良かった、もう振り返る必要はない、と強く諭され、そんな酷いことがあったのかと思い出すのが怖くなっていた。
昔の記憶に触れないようにしていた。
だから俺に卒アルで〝友達に囲まれて笑っている〟と告げられた時に、好奇心に抗えなかったそうだ。
月城は叔父夫婦に対して、とにかく申し訳ないと思い続け、病弱で臥せりがちな叔母さんに変わって、食事や洗濯など家事を率先してやり始めた。
料理は長年、そういう生活をしてきた賜物というわけだ。
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