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「で? 具体的な作戦はなんだったんだ?」
「わたしがハッキングでCanals社員の個人情報を漏洩させる。あくまで社員の、だったのは、いずれもらう会社だから、残ってくれた顧客は離したくなかったんだと思う」
「そうだな。うちの会社は今IPOの準備に入ってる。そこで銀行に融資をしぶられたら上場はできなくなるな。新オフィスの設立でもローンを組んだし、これからも設備投資は絶対だ。資金調達が危うくなったところで吸収の話を持ちかける作戦だったわけだ」
「うん。ごめんなさい。個人情報を漏洩なんて、みんなにすごく迷惑がかかる……のに」
「月城。辛かったよな」
「え?」
「俺に恨みがあるなら、俺ひとりの個人情報を漏洩させれば良かったんじゃないのか? そう提案したんじゃないのか? 一度はうちの会社に潜り込んで、社員と仲良くなって、その人たちが困るようなこと、やりたいなんて思う人間じゃない、月城は。いくら親の仇だって、他の人間を巻き込むような復讐のやり方をするやつじゃない」
月城は唇をきつく噛んで俯いた。それこそ、血が滲みだしそうなほどきつく。
「どんな脅され方をしたんだ?」
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