◇◇村上健司◇◇ 約束

19/28
前へ
/269ページ
次へ
 「……脅されたわけじゃない。決めたのはわたしだよ」 「じゃあ何か、報酬的なものを提案されたんじゃないのか?」 「……わたしがやったことによってCanalsを傘下に入れることができたら……妹を、アメリカでの治療プログラムに参加させてくれる約束だった。Canalsを買収すれば将来巨額の収益が見込めるから。アメリカに妹を連れて行ける」 「治療……。うつ病と、失声症の?」 「そう。革新的なプログラムを持ってる病院がアメリカにあるの。どうしてもそこで、二葉(ふたは)に治療を受けさせたかった」  月城のアキレス腱は妹の二葉ちゃんだ。 記憶にある肉親が、二葉ちゃんしかいない。 それを分かっていて、そいつ、品川は月城を操っている。いや縛っている。卑怯だ。 「叔父さんの会社、品川ゼミナール、だよな?」  情報担当の枝川から詳しく聞いている、しつこくM&Aを仕掛けてくる会社だ。 「……うん」 「父親の弟なのに、苗字が違う。品川って地名じゃなく苗字なんだろ?」
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加