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「……脅されたわけじゃない。決めたのはわたしだよ」
「じゃあ何か、報酬的なものを提案されたんじゃないのか?」
「……わたしがやったことによってCanalsを傘下に入れることができたら……妹を、アメリカでの治療プログラムに参加させてくれる約束だった。Canalsを買収すれば将来巨額の収益が見込めるから。アメリカに妹を連れて行ける」
「治療……。うつ病と、失声症の?」
「そう。革新的なプログラムを持ってる病院がアメリカにあるの。どうしてもそこで、二葉に治療を受けさせたかった」
月城のアキレス腱は妹の二葉ちゃんだ。
記憶にある肉親が、二葉ちゃんしかいない。
それを分かっていて、そいつ、品川は月城を操っている。いや縛っている。卑怯だ。
「叔父さんの会社、品川ゼミナール、だよな?」
情報担当の枝川から詳しく聞いている、しつこくM&Aを仕掛けてくる会社だ。
「……うん」
「父親の弟なのに、苗字が違う。品川って地名じゃなく苗字なんだろ?」
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