◇◇村上健司◇◇ 約束

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 「ありがとう。わたし、しばらくCanalsのお世話になるよ。今は一緒に暮らしてるわけじゃないから、叔父さんにはごまかす」 「そうか! よかった。マジでよかった」  俺は肺が空になるほどの深いため息をついた。 それから力が抜け、ソファの背もたれに勢いよく倒れた。どれだけ前のめりで説得していたんだか。 「ありがとう。村上くん。自分を取り戻せたよ」 「よかったよ。月城はいじめには遭ってなかったよ。毎日、学校楽しくてしょうがない! ってキャラだった。中学でだってそうだったんだろうと思うよ」 「うん。思い出せたよ。友達のこともたくさん」 「二つ、俺と約束して」 「え?」 「まだ実家を調べたいだろ? ガムテープは剥がしたけど俺が割ったガラスはそのままになってる。せり出してる細い枝の根元を割ってかぶさるようにしたから、ちょっと見はわかんないけど。でもまた叔父さんが来ないとも限らないし、忍び込むわけだから、どうしても夜になっちゃうよな? だから行く時は連絡して。一緒に行こう」  月城はソファの座面に視線を落とし、所在なさげに指で軽く引っ掻いている。 「また……そんなことまで」
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