◇◇月城一颯◇◇ 夜走

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「いや。明日だって会社だし。もう遅いよ」 「途中で夕凪ちゃんが移動したらどうするの?」 「え……。夕凪の位置、追えるんじゃないの?」 「ハッキングだからどんな不具合が出るかわかんない」 「マジか……」 「行こう。急がないと」  わたしは自分から先にドアノブを大きく開いた。 「ありがと。ありがとう月城」 それからわたし達はタクシーで村上くんの自宅マンションに帰った。村上くんはミケとチャピのご飯やらおやつを用意してから、またすぐに外に出る。 今度は彼の車に乗り込んだ。 村上くんの車は黒い大型の4WD、SUVだ。こんな時なのに彼らしいな、と思ってしまう。  夕凪ちゃんの位置情報を車のナビにも送り、わたし達は湘南を目指した。 「なんで湘南なんだろうな」 「たぶん思い出の場所なんじゃないかな。彼氏との」 「なるほどな。よかった。マジで助かったよ。こんなの近場を闇雲に探したって絶対見つかんないもんな。親もひとまずどこにいるかわかって安心してるし」
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