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「村上さんですね。よろしくお願いします。月城一颯です」
通話を切ってからニヤニヤが止まらない。
「ボブかあー」
小学生の月城もボブっちゃボブだったよな。肩につくかつかないかの長さでとにかくサラサラしていたことだけを鮮明に覚えている。
あんなに髪質がいいんだからロングにしたらさぞかし映えるだろうな。
四時までまだ二時間はあった。俺は意味もなく1LDKのリビングに積んであった洋服を片付けようと手に取り……。
いや下心とかじゃない。別に旧知の仲だと明かしたからといって、月城がいきなりこの部屋に来ることなんてあり得ない。
「ナツじゃねえんだからよー」
チャラかった頃のやつを思い出し、片付け始めた洋服をもう一度ソファに放り出した。ちゃんと畳んであった洋服はばらけ、前の状態よりさらに乱雑になった。
たかだかダウンジャケットの交換ごときで待ち合わせをスタバにしたのは、もちろんその後、話くらいはできると狙ってのことだ。
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